プラチナの基礎知識
プラチナの和名は「白金」といいます。日本人は大変プラチナが好きな民族で全世界のジュエリー用プラチナ需要のうち、5分の1を日本が占めています。
「重くて火にも溶けない白い金」といわれたプラチナ
色は銀と同じ白系てすが、銀よりもわずかに黒みがかった渋みのある色合いをしています。
特徴1 融点がきわめて高い
プラチナの融点は1772℃。金の1064℃、銀の960.8℃よりはるかに高温づす。現在はプラチナの加工技術は完成していますが、かつてはこの溶けにくさが壁となり、ジュエリーには使われない時代が長く続きました。
特徴2 比重が重い
プラチナの比重は21.45。金は19.32、銀は10.50です。
特徴3 展延性が高い
大変延びやすく、金箔のように0.2ミクロン程度にまで薄くできます。粘りも強いため、ジュエリー素材に適しています。
特徴4 耐性が高い
王水(濃硝酸と濃塩酸の混合強酸液)以外に溶けず、銀のように自然に黒ずむこともありません。
世界最古のプラチナ製品は化粧用の小箱
古代からさまざまな用途に使われてきた金・銀に比べて、プラチナが人類と深く関わるようになったのはごく最近です。
利用された歴史がないわけではなく、金・銀と同じくコダイエジプト時代の遺跡からは、プラチナ製品が見つかっています。紀元前750年頃の女性神官・シェペヌペット一世の墳墓から発見された小さな化粧ケースは、表面に彫られた象形文字の一部にプラチナが象眼されています。「テーベの小箱」と名付けられたこの作品は、世界最古のプラチナ製品とされていますが、古代エジブト人が銀と違う金属としてプラチナを扱っていたかは疑問です。
インカ帝国の驚くべきプラチナ使い
実際にプラチナを使いこなしていたのは、南米イクアドルのインカ帝国(12~15世紀頃)です。卓越した金属文化を持っていたインカ人たちは、プラチナを「銀とは違うもの」ときちんと認識していました。エスメラルダ地方の遺跡からはたくさんのプラチナ製リングやペンダント、鼻輪、耳飾りが発見されていますが、それにしてもいったんどんな技術で、極めて高温でしか融解しないプラチナを精錬していたのかは謎です。
「小粒の銀」と名付けられた不遇の歴史
プラチナはスペイン語で「小さな銀」を意味します。1735年、スペイン人の海軍将校ドン・アントニオ・ウローラが、コロンビアのピント川近くで見つけた白い金属を「ピント川の小さな銀(=プラチナ デル ピント)」と呼んだことに由来します。
実はこの呼称には、プラチナを馬鹿にした意味合いも含まれています。当時のプラチナは、砂金に混ざった
砂白金(砂状のプラチナ)の状態で採取されていました。当時は砂金と砂白金の分離はとても難しく、しかも分離したところで砂白金は、加工の術が分からない厄介者。今からは想像もつきませんが、当時は銀よりも価値が低く、砂金掘り師たちは砂白金が見つかると土に埋めて戻したそうです。
溶解法の発見がプラチナの転機に
1751年にプラチナに転機が訪れます。イギリスの科学者チャールズ・ウッドとウィリアム・ブラウンリッグが英国王室協会に「プラチナは他の金属と性質が異なる」という共同研究の成果を報告しました。ヨーロッパ中の研究者たちはがぜんプラチナに注目し、1779年にはドイツのフランツ・K・アハルトによって、砒素を加えて加熱する溶解法が確立します。
ジュエリー素材として不動の地位を築いた20世紀
加工の途があると分かると、実験的にいくつかのジュエリーブランドがプラチナ製品を作りました。18世紀のフランス宮廷では、ルイ16世の専属金細工師、マール・マチェンヌ・ジャネティが苦心の末に、見事なコーヒーポットや砂糖壺を製作しています。本格的にジュエリーに取り入れたのは、フランスの老舗宝飾店カルティエです。19世紀初頭にプラチナで作られた、当時流行のガーランド・スタイルジュエリーは、プラチナの特性を見事に生かした繊細で精考巧なつくりで、ダイヤモンドの輝きを一層引き立たせます。おまけに、銀のようにしだいに黒ずむこともありません。プラチナ人気はジュエリー界に瞬く間に広まり、伝統を重んじるヨーロッパ王室でさえも、王冠やティアラにプラチナを取り入れました。
ジュエリー用プラチナは、パラジウムとの合金が主流
ジュエリー用のプラチナは、硬度や加工のしやすさの点から、パラジウムを割金にした合金が一般的です。
プラチナの含有率は1000分率で表します。日本の国家検定ではPt1000、Pt950、Pt950、Pt850の4品位制を取っています。Pt1000は純プラチナ100%、Pt950は含有率95%の意味。Pt850以下の製品は、ジュエリーとしては一般的ではありません。
最も一般的なプラチナ合金は、プラチナ900です。このプラチナ900の代表的な合金は、プラチナ900‰に100‰のパラジウムを加えた合金です。溶解の温度こそゴールドに比べれずっと高いということはありますが、高温でも酸化せず、また、鍛造もしやすく、赤熱した状態での鎚打ちによって自由に変形させるなど、容易に加工することができます。硬さは65~140Hvまで上がります。リング、ブローチなどのほとんどには、プラチナ900が使用されています。
プラチナ900の三元合金には、上記合金のパラジウムの一部を、それぞれ10~30‰のルテニウムRu、あるいは30~70%の銅Cuで置き換えたものなどがあり、硬さや切削性を向上させるなどの効果があります。
プラチナ850の代表的な合金は、850‰のプラチナにパラジウム割金150‰を加えた合金です。硬さは、前記の二元プラチナ900より硬く、三元合金のプラチナ900並の75~200Hvまで上がります。しかも、製鎖性がよいので、専らネックチェーンなどに使われます。なお、日本では、プラチナ含有量が850‰未満の製品には、政府の品位証明はもらえないことになっています。